一般社団法人 日本血管内治療学会

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日本血管内治療学会誌 Vol.25 (2024)

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  • 巻頭言

    帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 中村 文隆

特集 New Paradigms:ステント、バルーンテクノロジーの進化 ―進化、深化は止まらない―

  • 1. 弓部分枝を温存するTEVAR −開窓型ステントグラフトNajuta−

    1)久留米大学医学部 外科 2)佐賀大学医学部 胸部・心臓血管外科
    鬼塚 誠二1)、田中 厚寿2)、大塚 裕之1)、中村 英司1)、新谷 悠介1)、今井 伸一1)、金本 亮1)、田山 栄基1)

    胸部や腹部の大動脈疾患に対する人工血管置換術を低侵襲化する目的で開発された血管内治療がステントグラフト内挿術である。ステント付き人工血管で病変部を内側から被覆する治療だが、弓部大動脈疾患に対する胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)においては温存すべき弓部分枝への対応が必要となる。通常のステントグラフトでは弓部分枝再建のためのバイパス術などが必要となるが、個々の大動脈形状に合わせて作製された三次元立体構造ステントグラフトの大弯側に設けた開窓によって、弓部分枝を温存しつつTEVARを可能としたのがNajutaである。世界でも類をみない分枝血管対応型ステントグラフトNajutaとはなにか。開発の歴史を振り返ると、デバイスラグによって本邦で長らく使用していた自作ステントグラフトの工夫から生み出された経緯がみえてくる。Najutaの特徴や留置手技および治療成績について文献的考察を交えてまとめた。

  • 2. どっちを選ぶ 〜DCB or DES 〜

    住友病院 放射線診断科・血管内治療(IVR)センター
    永富 暁

    高齢化社会に伴い大腿膝窩動脈病変を有する患者は増加しており、血管内治療は大きな役割を担っている。同領域において薬剤コーティングバルーン(drug-coated balloon:DCB)と薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)が治療デバイスの主流であるが、実臨床では両者の選択に悩む症例は少なくない。本稿ではDCBとDESのエビデンスを振り返り、各デバイスの使い分けについて再考する。

  • 3. WHO-FC Iを目指したCTEPH治療戦略

    杏林大学医学部 循環器内科学
    伊波 巧

    本邦で発展した“Refine BPA(バルーン肺動脈形成術)”の登場によって慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)治療の進歩は目覚ましく、現在では薬物治療や外科治療とBPA を患者個々の特性に応じて組み合わせたハイブリッド治療が行われるまでになっている。一方で、BPA 治療の現在抱えている問題や限界も浮き彫りになりつつあり、その一つが治療後もWHO-FC I まで到達できない症例や“Exercise PH(肺高血圧症)” による運動耐容能低下が挙げられる。現在行われている治療によって、CTEPH 患者の生命予後改善といった目標は達成しつつあるが、まだ十分にQOL 改善を達成できているとはいえない。当院では病変部の最適拡張を達成し、一つひとつの病変部の機能的な改善を評価するために、プレッシャーワイヤー/ カテーテルガイドでのBPA を実施している。また、BPA 治療後の運動耐容能に影響を与える因子に関しては、血行動態指標だけではないこともわかってきた。本総説では、WHO-FC Iを目指したCTEPH 治療の戦略および方向性について論じる。

  • 【総説】血管外科医が目指す最新のハイブリッド治療

    名古屋大学大学院医学系研究科 血管外科学
    坂野 比呂志

    脳・心臓を除く血管疾患治療の特徴は、大動脈であれば外科手術の高侵襲性、末梢血管であれば疾患そのものの広範囲性と血管内治療の限界が挙げられる。治療はできる限り低侵襲であることが望ましいが、遠隔期を含めた良好な治療成績も求められる。その目標を両立させるために血管外科医はハイブリッド治療に精通していることが必要となる。
    大動脈瘤・解離:大動脈領域では現在、低侵襲なステントグラフト治療が標準治療の一つとなっている。大動脈からはいくつかの重要な分枝が分岐しており、安易に犠牲にすることはできないが、本邦においてはいまだそれらの分枝を温存可能な側枝あるいは開窓付きのステントグラフトは承認されていない(弓部大動脈用の1 機種を除く)。そのためこの領域においては分枝へのバイパス(debranching)とステントグラフトを併用したハイブリッド治療が行われている。
    末梢血管:動脈硬化性疾患の中でも特に下肢動脈疾患において症候性となる症例は、すでにびまん性に血管が侵されていることが多い。それぞれのレベル(大動脈腸骨動脈、総大腿動脈、大腿膝窩動脈、下腿・足部動脈)で外科手術、血管内治療の長所・短所があり、両手技の選択および、その組み合わせ(ハイブリッド治療)を行うことができる環境と外科医が必要である。

  • 【症例報告】内頚静脈への留置が企図された中心静脈カテーテルが椎骨動脈に誤挿入された1例

    1)新百合ケ丘総合病院 脳神経外科 2)順天堂大学医学部附属静岡病院 脳神経外科
    眞上 俊亮1)、中尾 保秋2)、山本 拓史2)

    中心静脈カテーテル誤挿入による医原性椎骨動脈損傷は稀である。重篤な合併症を呈することがあり、速やかなカテーテル抜去、止血を要するが、定まった治療法はない。右椎骨動脈に中心静脈カテーテルが留置され、血管内治療を併用して抜去した症例を経験した。カテーテルは右内頚静脈を掠めて右椎骨動脈V2 segmentに逆行性に留置されていた。左椎骨動脈の発達は良好であった。右椎骨動脈の順行性血流を遮断し、カテーテル刺入部の近位と遠位をコイルで塞栓し母血管閉塞とした。中心静脈カテーテルを抜去し左椎骨動脈から造影すると、右椎骨動脈と内頚静脈に動静脈瘻を形成していた。瘻孔部にコイル塞栓を追加し動静脈瘻の閉塞と止血を得た。術後経過は良好であった。
    本症例は、カテーテルとコイルの干渉を防ぐため右椎骨動脈の刺入部の遠近位をコイル塞栓したが、動静脈瘻の形成から瘻孔部の塞栓も必要であった。過去の文献を踏まえて考察する。

日本血管内治療学会誌 Vol.24 (2023)

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  • 巻頭言

    福岡県八幡済生会総合病院 古森 公浩

特集 我々のデバイスはここがすごい!

  • 1. 待望された大静脈用ステント(Spiral relief stent):症状緩和における唯一無二のデバイス

    国立がん研究センター中央病院 放射線診断科 菅原 俊祐

    大静脈症候群は、狭窄部位と症状により、上大静脈症候群と下大静脈症候群に大別される。大静脈症候群に対するステント留置術は、前向き試験で70%前後の有効性が報告されており、他の緩和治療法と比較して速やかな症状緩和が期待できるとともに、安全性も高い。本邦では保険診療として施行することが可能であるが、適切な適応判断と合併症リスクの最小化のために、複数の専門的な診療科による適応判断が必要である。大静脈ステント留置術の技術的難易度は高くはないが、やや移動しやすいというステントの特性と、symmetric stent placement やpullthrough法の併用など、いくつかの技術的な要点をおさえておく必要がある。大静脈ステント留置術で生じる可能性のある重大な合併症として、術中の出血やステント移動、術後の心不全・肺水腫などが報告されており、術後急性期の管理にも注意をはらう必要がある。

  • 2. DESの進化とは?

    東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 中村 正人

    Percutaneous coronary intervention(PCI)の歴史はデバイスの進化と経験の蓄積であり、薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)の登場によってPCIは成熟期を迎えた。DESは、plat formとしてのステント、コーティング、薬剤の3要素によって構成されるが、第1世代のDESが登場後、このいずれもが進化を遂げてきた。結果、この15年間でステント血栓症、心死亡率は経年的に低下し、2剤抗血小板療法の投薬期間は著しく短縮した。

  • 3. 血管外科領域における小口径カバードステントの役割

    1)新百合ヶ丘総合病院 血管外科 2)東京慈恵会医科大学附属病院 外科学講座 血管外科分野
    金子 健二郎1)、大木 隆生2)

    小口径ステントグラフトであるゴア社製のバイアバーンステントグラフトの登場は、血管内治療における画期的な革新となった。バイアバーンステントグラフトはexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)とNitinol 製ステントから構成されており、グラフト内腔にはヘパリンが塗布され、開存率が向上された。適応は、腕頭動脈、頚動脈等を除く血管損傷、浅大腿動脈の症候性末梢動脈疾患、透析用人工血管内シャント吻合部狭窄と多岐にわたる。その他、適応外使用となるが、末梢動脈瘤や、胸部・腹部大動脈瘤に対する枝付きステントグラフトを施行する際、分枝血管の温存目的の使用の報告も散見され、その使用領域は広がっている。血管外科領域におけるバイアバーンステントグラフトの立ち位置につき、症例を踏まえ提示する。

  • 4. EVT後の抗血栓療法

    東京医科歯科大学病院 血管外科 工藤 敏文

    下肢動脈疾患(lower extremity artery disease:LEAD)に対する血管内治療(endovascular treatment:EVT)後の抗血栓療法の目的は、局所の動脈開存率の向上と全身心血管イベントの減少である。LEADに対するEVT後の抗血小板薬二剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)は、アスピリンとクロピドグレルの組み合わせが一般的である。EVTのテクニックとデバイスが進化する一方で、EVT後のDAPTを含めた抗血栓療法のエビデンスは未だ十分でない。

  • 5. Steerable Microcatheter「LEONIS Mova」の実力

    金沢大学医薬保健研究域 医学系 放射線科学 扇 尚弘

    Steerable Microcatheter「LEONIS Mova」の最大の特徴はマイクロカテーテル先端の方向を操作できる点である。急峻に分岐する血管や太い血管から分岐する血管の選択に力を発揮する。また、先端形状をロックすることができるため、曲がった状態で固定することにより、血管内でのカテーテルのバックアップを高めることができる。先端径は2.0Fr、2.4Fr、2.9Frがラインナップされる。2.9FrのハイフロータイプはTriaxial Systemとして使用することができ、これにより先端の可動による選択性、固定によるバックアップ強化、セレクティブマイクロカテーテル内挿による末梢到達性を手に入れることができる。Triaxial Systemは特に塞栓術においての応用力が高く、ステントグラフト内挿術後のtypeⅡエンドリークに対する塞栓術など難易度の高い症例で有用である。

  • 【テクニカルノート】高度石灰化を伴う急性心筋梗塞(STEMI)病変に対する新たな治療戦略のoptionの提案

    藤田医科大学岡崎医療センター 循環器内科
    宮島 桂一、大田 将也、橋本 洋輔、志貴 祐一郎、吉木 優、鷹津 英麿、丹羽 雄大、尾崎 行男

  • 【症例報告】胸腹部大動脈瘤人工血管置換術後分枝再建部仮性動脈瘤に対して自作開窓型ステントグラフトで治療を行った1例

    川崎医科大学 心臓血管外科学
    山根 尚貴、桒田 憲明、柚木 靖弘、金岡 祐司、種本 和雄

  • 【原著】急性上腸間膜動脈(SMA)閉塞症に対する治療におけるIVRの意義

    1)加古川中央市民病院 放射線診断・IVR 科 2)加古川中央市民病院 消化器外科 3)加古川中央市民病院 心臓血管外科
    坂本 憲昭1)、松本 祥一1)、延原 正英1)、中村 徹1)、細見 竜太郎1)、田中 千賀1)、上月 章史2)、金田 邦彦2)、脇山 英丘3)、大保 英文3)

    目的:当院における急性上腸間膜動脈(SMA)閉塞症の治療成績の検討

    対象と方法:2016年7月から2019年12月までの期間に、当院で治療を行ったSMA閉塞症6例(男性5例、女性1例)、平均年齢64.6歳(範囲:44-75歳)を対象とした。閉塞機序、部位、発症から診断までの時間、および治療経過を検討した。SMA狭窄がある症例をSMA血栓症と定義した。

    結果:閉塞機序はSMA塞栓症4例、SMA血栓症2例であった。閉塞部位は全例でSMA起始部と中結腸動脈分岐部の間で、発症から臨症診断までの時間は平均31.6時間(最小- 最大:4-88時間)であった。診断時、腸管壊死が疑われなかった4 例でinterventional radiology(IVR)が初回治療として選択され、うち2例で腸管温存が得られた。腸管切除は合計4例で施行された。SMA血栓症の2例では腸間膜血流不全の改善を目的に腸管切除後にIVRによる血行再建が施行された。転帰としては、大量腸管切除2例(うち1例は急性期死亡)であった。IVRの合併症として、アクセス損傷が1例に生じた。

    結論:SMA閉塞症の早期診断および迅速なIVRは大量腸管切除回避のために必要である。

  • 編集後記

    一般社団法人 日本血管内治療学会
    編集委員会 副委員長 森野 禎浩
    (岩手医科大学 循環器内科)

編集委員会名簿

委員長 西巻 博(聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科/ハイブリッド心臓大動脈治療センター)
副委員長 大須賀 慶悟(大阪医科薬科大学 医学部 放射線診断学教室)
副委員長 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳血管治療研究部)
副委員長 村上 厚文(国際医療福祉大学医学部 血管外科学/国際医療福祉大学病院 循環器センター血管外科)
副委員長 森野 禎浩(岩手医科大学 循環器内科)
委員 穴井 洋(市立奈良病院 放射線科)
委員 大木 隆生(東京慈恵会医科大学 血管外科)
委員 金岡 祐司(川崎医科大学 心臓血管外科学)
委員 古森 公浩(福岡県済生会八幡総合病院)
委員 中村 文隆(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
委員 長谷部 光泉(東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科)
委員 原 英彦(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
委員 松丸 祐司(筑波大学 脳神経外科 脳卒中予防・治療学講座)
委員 宮地 茂(愛知医科大学 脳神経外科・脳血管内治療センター)

日本血管内治療学会誌 Vol.23 (2022)

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  • 巻頭言

    奈良県立医科大学附属病院 吉川 公彦

特集 緊急症例への取り組み

  • 1. 大動脈緊急症例への取り組み ―ICTを用いた医療連携普及への期待―

    旭川医科大学 外科学講座 血管外科学分野 東 信良

    循環器病に対する医療は日進月歩で進歩しているが、大動脈解離や大動脈瘤破裂といった大動脈緊急症はいまだに死亡率が高く、循環器病対策推進計画においても大動脈緊急症に対する救急体制の整備が取り上げられている。大動脈緊急症の特徴として、治療開始までに迅速さを要すること、治療難易度が高く治療可能病院が限られること、治療方針決定には画像情報が極めて重要であることが挙げられる。そのため、救急隊と病院間の連携および、初療病院とセンター病院(大動脈拠点病院)との情報連携が重要であり、治療病院の専門医がいかに迅速に画像情報に接することができるかが救命率向上に直結する。情報のセキュリティや患者個人情報に配慮しつつ、ICT を活用する試みが全国多施設臨床研究として進捗しており、今後そのエビデンス確立とともに、全国に病院間画像連携の仕組みが普及することが期待される。

  • 2. 外傷性出血に対するIVR

    帝京大学医学部附属病院 放射線科 近藤 浩史

    近年の技術発展やデバイス改良により、IVRは外傷患者にとって不可欠な治療法の一つとなった。血行動態が安定した患者だけでなく、血行動態が不安定な患者にもIVRが行われるようになった。近年、ダメージコントロールインターベンショナルラジオロジー(DCIR)という概念が提唱され、これまでの外傷治療戦略を一新することになった。外傷治療において、集学的アプローチにおけるIVRの役割を確立することは非常に重要である。外傷システムの3本柱としてThe Right Patient in the Right Time to the Right Placeといわれるように、IVRを行うときはThe Right Patient in the Right Time to the Right IR teamであるべきである。本稿では、これらの戦略の知識を広げることに重点を置き、外傷診療における緊急DCIRの時間的制約のある手順を理解するための治療戦略を解説する。

  • 3. 脳神経外科領域における緊急症例での脳血管内治療の役割と限界

    神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科 太田 剛史

    脳血管内治療は、特に急性期脳卒中において、脳神経外科の緊急治療の重要な役割を占めている。前方循環脳主幹動脈急性閉塞に対する機械的血栓回収療法は、臨床転帰改善をもたらす必須の治療である。今後はほかの部位の閉塞、時間ではなく組織評価に基づく適応判断などの対象拡大が期待され、手術症例数の増加に対応するための実施医の認定も始まっている。破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術は、直達手術と脳血管内治療のいずれもが可能な場合には、臨床転帰がより優れている可能性がある。稀ではあるが、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻、頭部外傷による血管損傷に対して緊急で脳血管内治療を実施することがある。脳神経外科領域の緊急治療では直達手術および内科治療の備えが必要だが、今後も脳血管内治療はさらに発展するだろう。

  • 4. 急性冠症候群における早期再灌流の重要性と時間短縮の取り組み

    岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 石曾根 武徳、肥田 頼彦、森野 禎浩

    急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)、とりわけST上昇型心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction:STEMI)において、primary PCI( 経皮的冠動脈インターベンション;percutaneous coronary intervention)による再灌流までの時間は、患者の生命予後を左右する重要な因子である。早期再灌流を達成するためには、PCIの手技のみならずPCIを施行するまでの時間をいかに短縮するかが重要で、患者が病院に到着する前後それぞれにポイントが何点か挙げられる。本稿ではACSに対する早期再灌流の重要性を再確認するとともに、当院で行っている急患への取り組みについて概説する。

  • 【原著】当院におけるDouble-layer micromesh stent(CASPER)の初期使用成績

    1)順天堂大学医学部附属順天堂医院 2)順天堂大学 脳神経血管内治療学講座
    中嶋 伸太郎1)、三島 有美子1)、矢富 謙治1)、寺西 功輔1)、近藤 聡英1)、大石 英則1)2)

    目的:プラーク飛散による周術期脳卒中が懸念される従来の頚動脈ステントよりも、血管内へのプラーク突出を抑制するといわれる新世代micromesh stent(CASPER)を用いて治療した頚動脈狭窄症12例の初期治療成績を検討した。

    方法:当院でCASを施行した12例を対象とし、対象期間は2020年9月から12月とした。適応基準は、症候性で狭窄率50%以上、無症候性で狭窄率70%以上を対象とした。

    結果:CASPERは全例留置でき、周術期に一過性の造影剤脳症をきたした症例を1例認めたが、術後に永続合併症をきたした症例はなかった。代表2症例について、画像とともに症例を提示する。

    結論:術後MRIで症候性となる塞栓物質飛散の増加は認めず、CASPERの初期使用成績は良好であった。

  • 【テクニカルノート】前下小脳動脈上のflow related aneurysmのコイル塞栓によるマイクロカテーテル支持効果によりナイダス塞栓を施行しえた小脳脳動静脈奇形の一例

    1)大曲厚生医療センター 脳神経外科 2)NHO仙台医療センター 脳神経外科 3)秋田大学大学院医学系研究科 脳神経外科学講座
    大前 智也1)、江面 正幸2)、柳澤 俊晴1)、清水 宏明3)

  • 【原著】Najutaを使用したdebranch-TEVARの治療成績についての検討

    1)東京都健康長寿医療センター 血管外科 2)国際医療福祉大学三田病院 血管外科 3)青梅市立総合病院 血管外科  4)渋谷笹塚HD クリニック
    松倉 満1)、瀬尾 明彦2)、山本 諭3)、重松 邦広2)、川口 聡4)、小櫃 由樹生2)

    目的:弓部大動脈瘤に対してNajutaを使用したdebranch-TEVAR(d-TEVAR)の治療成績を検討した。

    方法:2016年11月から2020年11月にかけてd-TEVARを施行した弓部大動脈瘤13症例を対象とした。患者背景(性別、年齢、基礎疾患)、瘤性状、瘤径、中枢ネック長(瘤から左総頚動脈もしくは腕頭動脈までの距離)およびネック径、術後合併症、再治療の有無、生命予後を電子カルテに記載された情報をもとに後ろ向きに解析した。評価項目として1次エンドポイントを手術死亡および大動脈瘤関連死亡、2次エンドポイントを再治療の有無および脳神経合併症の有無とした。

    結果:患者背景として男性11例、女性2例、平均年齢(±標準偏差、以下同様)は76.9±5.5歳(範囲、以下同様:68-86歳)。大動脈瘤の性状として紡錘状瘤10例、嚢状瘤2例、解離性瘤1例であった。平均瘤径は58.7 ±6.7mm(42-68mm)、腕頭動脈もしくは左総頚動脈から瘤頚部までの平均ネック長は16.7 ± 5.8mm(7.8-28.5mm)、平均ネック径は35.0 ± 1.6mm(32.3-37.6mm)であった。また13例中10例は適応基準(instruction for use:IFU)外症例に相当した。施行した術式の内訳は左総頚から鎖骨下動脈にバイパス施行した1-debranch症例が7例、右鎖骨下から左鎖骨下を介して左総頚動脈にバイパス施行した2-debranch症例が6例であった。平均観察期間は36.8ヵ月(14-60ヵ月)、観察期間中に手術死亡および大動脈瘤関連死亡は認めなかったが、大動脈非関連死亡を2例に認めた。瘤径拡大を4例に認め、追加治療を施行した。内訳は開窓部からのtype Ia エンドリーク2例、ステントグラフト末梢端の大動脈解離に伴うtype Ibエンドリーク1例、残存する腹部のリエントリーからの逆行性血流1例であった。Type Ia エンドリークを認めた症例は全てBovine arch症例であった。脳神経合併症に関しては大動脈内に多量の粥腫を認めた2例で小脳を中心とした多発性脳梗塞1例、不全対麻痺1例を認めた。

    結論:少数例の解析ではあるが、Najutaを使用したd-TEVARは中枢ネック長が短いIFU外症例でも許容される術式と考えられる。しかし大動脈内粥腫が豊富な症例に施行する場合は脳神経合併症の発症リスクが高く、症例選択に注意を要する。また分枝開口部が広いBovine arch症例では、術後type Iaエンドリーク残存リスクが高い可能性がある。

  • 編集後記

    一般社団法人 日本血管内治療学会
    編集委員会 副委員長 大須賀 慶悟
    (大阪医科薬科大学医学部 放射線診断学)

編集委員会名簿

委員長 西巻 博(聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科/ハイブリッド心臓大動脈治療センター)
副委員長 大須賀 慶悟(大阪医科薬科大学 医学部 放射線診断学教室)
副委員長 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳血管治療研究部)
副委員長 村上 厚文(国際医療福祉大学医学部 血管外科学/国際医療福祉大学病院 循環器センター血管外科)
副委員長 森野 禎浩(岩手医科大学 循環器内科)
委員 穴井 洋(市立奈良病院 放射線科)
委員 大木 隆生(東京慈恵会医科大学 血管外科)
委員 金岡 祐司(川崎医科大学 心臓血管外科学)
委員 古森 公浩(福岡県済生会八幡総合病院)
委員 中村 文隆(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
委員 長谷部 光泉(東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科)
委員 原 英彦(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
委員 松丸 祐司(筑波大学 脳神経外科 脳卒中予防・治療学講座)
委員 宮地 茂(愛知医科大学 脳神経外科・脳血管内治療センター)

日本血管内治療学会誌 Vol.22 (2021)

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  • 巻頭言

    神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科 坂井 信幸

特集 血管内治療における抗血栓療法

  • 1. 血管内治療における抗血栓療法 冠動脈編

    帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 吹野 恵子、中村 文隆

    心血管疾患は、10年以上にわたり、本邦におけるの死因の第2位を占め、その疾病負担は大きい。経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は、虚血性心疾患の診断・治療を劇的に変えたが、その歴史は、血栓症と出血性イベントの抑制を模索し続けた抗血栓療法の歴史でもあった。PCIの発展に伴い、当初ステント血栓症を予防するために導入された抗血栓療法の主眼は、「いかに血栓症を防ぐか」から、「いかに血栓症のリスクを上げずに出血を防ぐか」にシフトしてきた。昨年改訂された本邦のガイドラインは、日本版高出血リスク評価基準の作成や、適切な評価に基づいたより短期間の抗血小板薬、抗凝固薬併用療法など、世界に先駆けた内容となっている。本稿では、PCIの発展に伴う抗血栓療法の変遷と、最新のガイドラインを踏まえた抗血栓療法の現況について概説する。

  • 2. Structural heart disease interventionにおける抗血栓療法

    東海大学医学部付属病院 内科学系循環器内科学 大野 洋平、伊苅 裕二

    構造的心疾患インターベンション(structural heart disease intervention:SHDI)のうち、弁膜症の低侵襲治療の代表である経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が本邦に保険償還下に登場してから丸8年が経過しようとしている。その間に、多くの臨床試験を経て、本邦においてもあらゆるリスクの重症大動脈弁狭窄症(AS)患者へのTAVI治療が可能となった。
    一方で、TAVI周術期の抗血栓療法については、まだエビデンスの不足している領域となっている。実際、2020年に改訂された日本循環器学会の「弁膜症治療のガイドライン」においてもTAVI後の抗血栓療法に関する記載はわずかにとどまっている。本稿では、TAVI周術期の抗血栓療法に関する臨床試験を紹介しながら至適な抗血栓療法についてまとめてみた。

  • 3. アブレーション周術期の抗血栓療法

    東邦大学大学院医学研究科 循環器内科学 藤野 紀之、池田 隆徳

    心房細動(atrial fibrillation:AF)はよく遭遇する不整脈で、製薬会社の情報提供や多くのエビデンスの結果からAFに対する抗凝固療法の導入はかなり普及した。日本循環器学会のガイドラインでは1)、「薬物治療抵抗性の症候性発作性AF」に対するアブレーションはクラスⅠの治療適応があり、根治を求めてAFへカテーテルアブレーションを行う件数は年々増加している。しかしながら、アブレーション手技をマスターするまでにはある程度の時間と経験が必要で、脳梗塞や心タンポナーデといった大きな合併症を含め4〜5%に併発症を認めるという課題もある。近年は、安全で比較的容易に技術が取得できるバルーンを用いたアブレーションが可能となり、抗凝固薬は従来のワルファリンから管理が簡便で半減期の短い直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の使用へと移行している(Table 1)。多くの比較試験によりアブレーション周術期の適切な抗凝固管理は確立されつつあり、ここに概説する。

  • 4. 大動脈瘤・末梢動脈疾患に対する血管内治療に関連した抗血小板療法・抗凝固療法

    川崎医科大学 心臓血管外科 柚木 靖弘、金岡 祐司、桒田 憲明、田村 太志、赤木 大輔、田淵 篤、渡部 芳子、山根 尚貴、山澤 隆彦、種本 和雄

    大動脈瘤・末梢動脈疾患の観血的治療に血管内治療が行われることが多くなった。術後に抗血栓療法が多くの症例で必要であるが、抗血栓療法が出血リスクを伴うことから、適格な判断が求められる。
    大動脈瘤に対する血管内治療後の抗血栓療法に関してはあまりevidenceと呼べるものがなく、末梢動脈疾患では現在公開されているガイドラインでも推奨事項に差がみられる。
    ここでは大動脈瘤・末梢動脈疾患の術後の抗血栓療法に関して文献的に考察をする。

  • 5. 脳血管内治療における抗血栓療法

    1)筑波大学 医学医療系 脳神経外科 2)筑波大学 医学医療系 脳神経外科 脳卒中予防治療学講座
    細尾 久幸1)、早川 幹人2)、松丸 祐司2)

    脳神経外科領域における脳血管内治療は、デバイスや技術の発展により、治療適応が拡大し、症例数は年々増加している。しかしながら、侵襲性が低い一方、血管内へのカテーテル誘導、異物留置(コイルやステントなど)に際し、血栓形成に伴う虚血性合併症のリスクは常にあり、周術期の適切な抗血栓療法は、治療成績向上のために非常に重要である。脳血管内治療において生じる虚血性合併症は、ときに重大な神経後遺症をきたし得ることは、肝に銘じておくべきである。本稿では、特に抗血栓療法の重要性が高いと考えられる、頚動脈狭窄症に対するステント留置術(carotid artery stenting:CAS)と、脳動脈瘤に対するコイル塞栓術(ステント併用を含む)・フローダイバーター留置術において、手技や治療内容に伴い虚血性合併症をきたすメカニズムと、周術期および術後の抗血栓管理について概説する。

  • 6. 外傷性・医原性血管損傷に対するバイアバーン留置後の抗血栓療法

    神戸大学医学部附属病院 放射線診断・IVR科/ IVR センター 岡田 卓也、松代 啓吾、Mostafa Hamada、佐々木 康二、元津 倫幸、上嶋 英介、祖父江 慶太郎、山口 雅人、杉本 幸司、村上 卓道

    外傷性・医原性血管損傷に対するバイアバーンステントグラフト留置後の抗血栓療法には定まった見解はなく、治療担当医の判断に委ねられている。浅大腿動脈の閉塞性疾患に対するバイアバーン留置後の抗血栓療法に準じた治療が行われることが多いが、治療血管の部位や再出血のリスクなどを鑑みて調整する必要がある。腹部分枝では、血管の蛇行や血管周囲の炎症や感染など、グラフト閉塞の原因となり得る因子がある一方で、必ずしも長期開存が求められない場合もある。腸骨動脈では、グラフト閉塞の可能性は基本的に低いと思われるため、場合によっては抗血栓療法を行わないのも一つの選択肢である。反対に、鎖骨下動脈では確実な開存性を担保したい場合が多く、抗血栓療法は必須と考える。
    外傷性・医原性出血に対するバイアバーンステントグラフトの長期成績はいまだ不明であり、さらなるエビデンスの構築が望まれる。

  • 【原著】EVAR術後エンドリークが原因で開腹手術を行った症例の検討

    1)国際医療福祉大学病院 循環器センター 血管外科 2)国際医療福祉大学医学部 血管外科学
    村上 厚文1),2)、高澤 一平1)、洞口 哲1)、加藤 盛人1)

    目的:腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)術後エンドリーク(endoleak:EL)による瘤径拡大に対し、開腹手術(lateopen conversion:LOC)に至った症例について検討を行った。

    方法:2007年5月から2020年4月までに施行されたEVARは266例で、ELを原因とする瘤径拡大に対するLOC6 例(2.3%)を対象とした。

    結果:術式は全例経腹膜到達法で大動脈瘤を露出、分枝結紮+ステントグラフト(stent graft:SG)温存+瘤縫縮術を施行した。30日以内の死亡率は0%であったが、破裂契機の2例は大動脈腸管廔を形成し、それぞれ4ヵ月、8ヵ月後に死亡した。残りの4例中1例もタール便を主訴として7ヵ月後に死亡、大動脈腸管廔が疑われた。生存例3例のうち1例で残存腰動脈が原因と思われる瘤の再拡大を認めている。

    結論:EVAR後の主にtype Ⅱ ELが原因の瘤径拡大に対し、SG温存、瘤縫縮術は比較的低侵襲な方法と考えるが、EL再発や破裂例では予後不良であった。LOC適応時期や術式は人工血管置換も含めて慎重に検討すべきであると考えられた。

  • 【症例報告】腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後にtypeⅢb エンドリークをきたした1例

    NTT 東日本札幌病院 心臓血管外科 松崎 賢司、瀧上 剛、松浦 弘司

  • 【原著】EVAR時の内腸骨動脈塞栓におけるpreloading coil in plug (p-CIP)法の臨床的有用性

    1)聖マリアンナ医科大学 放射線医学 2)聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科学 3)北里大学医学部 救命救急医学
    小川 普久1)、西巻 博2)、千葉 清2)、丸橋 孝昭3)、小徳 暁生1)、八木橋 国博1)、三村 秀文1)、宮入 剛2)

    目的:腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)時の内腸骨動脈(IIA)塞栓におけるpreloading coil in plug( p-CIP)法の臨床的有用性について検討する。

    方法:対象は、2019年2月から2020年10月までに、EVAR時にIIA本幹またはIIA分枝をAmplatzer vascularplug Ⅰ(AVP Ⅰ)を用いたp-CIP法で塞栓した20症例27分枝である。対象分枝の内訳は、IIA本幹18本、IIA分枝9本である。手技的成功率、対象血管径、使用コイル、プラグ内に使用したコイル本数と全コイル長、骨盤内虚血および再開通の有無について後方視的に検証した。手技的成功は、目的部位にプラグを留置でき、プラグ内のコイル留置のみで術中に完全塞栓が得られたものとした。

    結果:手技的成功率は81.5%(22/27分枝)であった。平均対象血管径は9.3 ± 3.2mmで、プラグの平均径は12.1± 2.9mmであった。
    プラグ内に使用した平均コイル本数は4.3 ± 2.5 本、平均コイル長は98.2 ± 69.6cm であった。AVP Ⅰ展開までにローディングしたマイクロカテーテルおよびガイドワイヤーが逸脱した例はなかった。平均観察期間は349 ± 210日で、3例(15.0%)で臀筋跛行を認めた。いずれの分枝も再開通は認めていない。

    結語:p-CIP法は確実にプラグ内にコイル留置が可能で、EVAR時のIIA塞栓に有用な手法と考える。しかし、コイル選択や至適サイズ、必要本数については今後の検討課題である。

  • 【原著】石灰化が著明な腸骨動脈狭窄病変におけるthree-dimensional computed tomography angiography (3D-CTA) 再構成画像の有用性の検討

    1)日野市立病院 放射線科 2)日野市立病院 外科
    三浦 弘志1)、一坂 俊介2)

    目的:間欠性跛行やcritical limb ischemia(CLI)症状を有する患者における腸骨動脈狭窄責任病変部の検出が困難であった症例に対し石灰化除去操作を含めた3D-CTA再構成を行い、病変の描出能を検討した。

    方法:ルーチンCT(軸位断およびmaximum intensity projection[MIP])検査で責任病変検出困難であった4例においてretrospectiveに石灰化除去操作を含めたMIPやcurved planar reconstruction(CPR)等の3D-CTA再構成画像を、2例ではprospectiveに作成し、血管内治療施行医が治療前血管造影(DSA)画像と視覚上の比較評価を行い、一致するかどうかを検討した。

    結果:3D-CTA再構成画像では、DSA画像とおおむね同等の責任病変検出が得られた。

    結論:3D-CTA再構成画像は有用であり、血管内治療前に作成することで、治療方法や医療材料選択時の参考となる情報が得られる可能性があることが示唆された。

  • 【原著】当院における脳血管内治療における穿刺部トラブル症例の検討

    1)川崎幸病院 脳血管センター 2)東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座
    成清 道久1)、壷井 祥史1)、小島 アリソン 健次1)、橋本 啓太1)、 大橋 聡1)、長崎 弘和1)、神林 智作1)、村山 雄一2)

    目的:当院5年間で行った血管内治療の穿刺部合併症について後方視的に調査し、傾向と対策について文献的考察を交え報告する。

    方法:2015年1月から2019年12月までの5年間で、頭頚部領域の血管内治療741件について、手術記録およびカルテ記載を参照し、穿刺部合併症の発症状況を後方視的に調査した。

    結果:5年間の頭頚部領域の血管内治療741例中、穿刺部合併症は19例(2.6%)で認めた。重症合併症は9例(1.2%)で、内訳は皮下血腫5例、後腹膜血腫1例、仮性動脈瘤2例、血管閉塞1例であった。そのうち、仮性動脈瘤と血管閉塞の2例に追加手術として、大腿動脈に対する外科的血管形成術を要した。741例中703例(94.9%)で止血デバイスを使用しており、17例(2.3%)で合併症が発症していた。一方、用手または圧迫器による止血では、38例中2例(5.3%)で発症した。

    結論:止血デバイスは比較的安全で簡便に使用できるが、穿刺部合併症は有意に減少しているわけではなく、患者ごとに穿刺部血管の評価や患者背景を把握し、術後の経過観察に注意する必要がある。

  • 【症例報告】軽症の急性中大脳動脈M1部閉塞症に対して血管内治療が有効であった1例

    1)医真会八尾総合病院 脳神経センター 2)高清会高井病院 脳血管内治療科・IVR科
    岡本 愛1)、高山 勝年2)、尾本 幸治1)、和田 敬2)、黒川 紳一郎1)

  • 【症例報告】Onyxによる経動脈的塞栓術が有用であった左横静脈洞-S状静脈洞部硬膜動静脈瘻の1例

    1)医真会八尾総合病院 脳神経センター 2)高清会高井病院 脳血管内治療科・IVR 科 3)奈良県立医科大学附属病院 放射線科・IVRセンター
    岡本 愛1)、高山 勝年2)、尾本 幸治1)、明珍 薫3)、黒川 紳一郎1)

  • 【症例報告】大動脈解離術後無名動脈総頚動脈解離に対するステント留置術の一例

    1)大曲厚生医療センター 脳神経外科 2)NHO 仙台医療センター 脳神経外科
    大前 智也1)、江面 正幸2)、柳澤 俊晴1)

  • 編集後記

    一般社団法人 日本血管内治療学会
    編集委員会 副委員長 村上 厚文
    (国際医療福祉大学 血管外科学)

編集委員会名簿

委員長 西巻 博(聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科)
副委員長 大須賀 慶悟(大阪医科大学 放射線診断学教室)
副委員長 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
副委員長 村上 厚文(国際医療福祉大学病院 循環器センター 血管外科)
副委員長 森野 禎浩(岩手医科大学 循環器内科)
委員 大木 隆生(東京慈恵会医科大学 血管外科)
委員 金岡 祐司(川崎医科大学 心臓血管外科学)
委員 吉川 公彦(奈良県立医科大学附属病院 院長/IVRセンター長)
委員 古森 公浩(名古屋大学大学院医学系研究科 血管外科)
委員 中村 文隆(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
委員 長谷部 光泉(東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科)
委員 原 英彦(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
委員 松丸 祐司(筑波大学 脳神経外科 脳卒中予防・治療学講座)
委員 宮地 茂(愛知医科大学 脳神経外科・脳血管内治療センター)

日本血管内治療学会誌 Vol.21 (2020)

全文掲載はこちらから

  • 巻頭言

    一般社団法人 日本血管内治療学会 理事長 大木 隆生

特集 血管内治療における現状・問題点・将来展望

  • 1. 特集によせて

    東京慈恵会医科大学外科学講座 統括責任者 / 血管外科分野 教授 大木 隆生

  • 2. 出血性病変の脳血管内治療の現状と将来展望

    愛知医科大学脳神経外科 宮地 茂

    出血性脳血管障害には脳動脈瘤、動静脈シャント疾患、外傷性血管障害などがある。脳動脈瘤についてはコイルによる瘤の閉塞が、様々なアシストデバイスとアシストテクニックを用いて安全に行われるようになり、現在約半数の動脈瘤の治療手段となっている。一方、近年血流の整流化や瘤内血流の制止を生じさせて瘤の自然血栓化を誘導するデバイス(flow diverter、flow disruptor)が開発され、これにより大量のコイルを用いていた大型瘤に対しても根治的治療が可能となった。脳動静脈奇形については、従来のN-butyl cyanoacrylate(NBCA)を用いた塞栓術に加え、新しい液体塞栓物質であるOnyxを用いた根治的塞栓術が普及している。さらに、離脱式マイクロカテーテルを用い、血流コントロール下に経静脈的に逆行性に塞栓する方法も注目を浴びている。新しい細径カテーテルの開発により、遠位への到達が可能となり、脊髄硬膜動静脈瘻などアクセスしにくいシャント病変や脳腫瘍の術前塞栓術にも高い効果が得られている。

  • 3. 虚血性脳血管障害に対する血管内治療の現状と今後

    神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科 松本 調、今村 博敏、坂井 信幸

    虚血性脳血管障害に対する血管内治療の現状と問題点を踏まえ将来展望について概説した。急性脳動脈閉塞は一刻も早く再開通することが患者の転帰を左右する。ステントリトリーバーと吸引カテーテルを用いる機械的血栓回収療法の開発とエビデンスの確立により、できるだけ広く本療法を提供することが求められるようになった。動脈硬化性頭蓋内動脈狭窄症に対する血管形成術/ステント留置術の脳卒中予防効果は現在は示されていないため、内科治療抵抗性で発症早期を除き、技術的に治療可能な限られた適応に対して行われている。今後の機器開発とエビデンスの構築が求められている。頚動脈ステント留置術は適切な遠位塞栓防止を行い、アクセス困難などの治療困難例の適応判断が必要である。次世代ステントが導入され、術後の脳卒中発症の防止、再狭窄など中長期の成績の検証が待たれる。急性期も含め、適応の遵守、標準的治療手技の確実な実施に努め、他領域の脳血管内治療を学ぶことが重要である。

  • 4. 冠動脈インターベンション(PCI)の進歩

    藤田医科大学病院岡崎医療センター循環器内科 尾崎 行男

    冠動脈硬化の低侵襲治療として冠動脈インターベンション(PCI)は注目を集めてきた。1977年9月16日にGruntzigらによりZurichで始められたバルーンによるPOBAはPCIの第1の風であり、1986年からのWallstentによるbare metal stent(BMS)はPCIの第2の風であり、1999年に始まった薬剤溶出性ステント(DES)はPCIの第3の風である。一方、生体吸収性ステント(bioresorbable scaffold:BRS)は当初、超遅発性血栓症を防ぐ切り札として期待されたが(第4の風)、メタ解析により最新のDESより心事故が多くなった。心筋虚血の有無を判定できる冠動脈血流予備量比(FFR)や瞬時血流予備量比(iFR)は新たなPCIの施行基準になっている(第5の風)。さらにST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対するPCIの有効性は広く認められた(第6の風)。循環器内科のPCIを取り巻く環境は大きく変化しており、今後、血管外科、脳外科、放射線科、心臓外科との連携が一層重要になり、その意味で血管内治療学会が果たす役割は、今後ますます大きくなると思われる。

  • 5. 心原性脳卒中の予防的インターベンション:左心耳および卵円孔の経皮的閉鎖術の現状と課題

    岩手医科大学内科学講座循環器内科分野 森野 禎浩

    脳卒中の発症予防を目的とした、デバイスを用いた心臓構造のインターベンション治療が始まった。心房細動患者に対する左心耳閉鎖栓と、奇異性脳塞栓既往患者に対する卵円孔開存の閉鎖栓療法である。いずれもデバイス留置の代わりに、抗血栓療法を軽減ないし中止することができる。これらの有効性と安全性は、大規模ランダム化試験の長期観察によって確立している。前者はワルファリンに比べ、有意に死亡と出血合併症を低下させ、後遺症の大きい脳卒中の発症を低下させる。後者は、従来の薬物治療に比べ、有意に脳卒中の再発と出血合併症を低下させる。前者は出血合併症のため抗凝固療法の継続が困難な患者に対し、後者は60歳以下の若年の患者に対し、デバイス導入を考慮すべき時代となった。本邦では慎重に導入されてきたが、適応に関する深い議論を伴い、適正に普及させることが望ましい。心原性脳卒中の予防医療を、さらに成熟させる機会の到来である。

  • 6. 胸部大動脈疾患に対する血管内治療

    川崎医科大学心臓血管外科 金岡 祐司

    血管内治療デバイスや手技の進歩により、ステントグラフトをはじめとした血管内治療が普及した。血管内治療はその低侵襲性により、短期予後は良好である。したがって、特に高齢者の胸部大動脈疾患には有用で、胸部大動脈疾患に対するステントグラフト症例の増加が著明である。また、臓器虚血を有する大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖は第一選択治療となってきた。しかし、長期成績が明らかになるにしたがって、その成績を見直す時期になってきた。ここでは胸部大動脈疾患に対する血管内治療の現状、結果について概説する。

  • 7. 腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)の現況と将来展望

    1)聖マリアンナ医科大学放射線医学、2)聖マリアンナ医科大学心臓血管外科学、3)北里大学医学部救命救急医学
    小川 普久1) 、西巻 博2)、千葉 清2)、小徳 暁生1)、八木橋 国博1)、丸橋 孝昭3)、三村 秀文1)、宮入 剛2)

    腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)は、欧米の多施設ランダム化試験での優れた早期成績が追い風となって急速に普及し、人工血管置換術と並んで腹部大動脈瘤に対する標準治療として確立された。しかし、長期になると生存率や瘤関連死回避率で優位であったEVARの利点は失われ、その主因は瘤残存によるエンドリークであった。最も高頻度であるタイプⅡエンドリークに対する治療成績は未だ満足いくものではなく、予防的塞栓術への関心が高まっている。他の長期成績に影響するエンドリークとして晩期タイプⅠおよびタイプⅢ bエンドリークが注目されている。近年、タイプⅠエンドリークの解剖学的な危険因子も明らかになりつつあり、それぞれの特徴を活かした適切なデバイス選択やデバイスの改良、あるいはより中枢または末梢側へのランディング延長などの治療オプションが広がり、個々の生命予後や血管形態に応じたオーダーメイドの治療戦略が求められる時代となった。タイプⅢ bエンドリークは、Endotensionを含む治療抵抗性のエンドリークの中に一定頻度存在している可能性が示され、エンドリーク治療で無視できない存在となっている。
    瘤内を充填するendovascular aneurysm sealing(EVAS)は、物理的にエンドリーク発生を防止する新たなコンセプトであるが、中枢シーリングの安定性に課題が残り、今後さらなるデバイスの改良、開発が待たれる。

  • 8. 血管内治療における放射線防護

    久留米大学医学部放射線科 安陪 等思

    低侵襲でかつ治療効果が高い血管内治療の需要はこれからも高まり、医療の社会貢献に役立つと考えられる。一方、放射線防護について厳格な対応が求められている。血管内治療においても放射線防護は行為の正当化、防護の最適化、個人の線量限度の三原則に基づいて行われる。法改正により正当化の診療録への記載、診断参考レベルの最適化への応用、水晶体の線量限度などが変更されている。本稿では最近の法改正と本邦の2020年診断参考レベル(diagnosticreference level:DRL)を加味して放射線防護の基本を概説する。

  • 【症例報告】Four-dimensional digital subtraction angiography による塞栓術前評価が有用であった気管支動脈蔓状血管腫の一例

    1)東京慈恵会医科大学附属病院放射線医学講座、2)東京慈恵会医科大学附属病院外科学講座
    木佐木 俊輔1)、蘆田 浩一1)、長谷川 靖晃1)、樋口 陽大1)、尾尻 博也1)、大塚 崇2)

  • 【テクニカルノート】脳急性期再開通療法における手技の進歩に伴う成績の現状と課題

    1)九州医療センター脳血管内治療科、2)九州医療センター脳血管・神経内科
    津本 智幸1)、原 健太1)、宮崎 雄一1)、桑城 貴弘2)、矢坂 正弘2)、岡田 靖2)

  • 編集後記

    一般社団法人 日本血管内治療学会
    編集委員会 委員長 西巻 博
    (聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科)

編集委員会名簿

委員長 西巻 博(聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科)
副委員長 大須賀 慶悟(大阪医科大学 放射線診断学教室)
副委員長 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
副委員長 村上 厚文(国際医療福祉大学病院 循環器センター 血管外科)
副委員長 森野 禎浩(岩手医科大学 循環器内科)
委員 大木 隆生(東京慈恵会医科大学 血管外科)
委員 金岡 祐司(川崎医科大学 心臓血管外科学)
委員 吉川 公彦(奈良県立医科大学附属病院 院長/IVRセンター長)
委員 古森 公浩(名古屋大学大学院医学系研究科 血管外科)
委員 中村 文隆(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
委員 長谷部 光泉(東海大学医学部付属八王子病院 画像診断科)
委員 原 英彦(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
委員 松丸 祐司(筑波大学 脳神経外科 脳卒中予防・治療学講座)
委員 宮地 茂(愛知医科大学 脳神経外科・脳血管内治療センター)