一般社団法人 日本血管内治療学会

理事長挨拶


一般社団法人 日本血管内治療学会
理事長 大木 隆生
東京慈恵会医科大学 外科学講座 統括責任者 / 血管外科分野 教授

この度、一般社団法人日本血管内治療学会の理事長を拝命いたしました

当会は四半世紀前に岡田昌義理事長の彗眼とリーダーシップにより、血管外科、循環器内科、放射線科、脳神経外科を中心に専門領域の違う医師が一堂に会する貴重な学術集会として発足しました。血管内治療の発展と共に本学会もその役割を担って参りました。 しかし、その後の医療の細分化とともに個々の疾患における治療内容の専門性が高くなり、その結果、各領域に血管内治療に関する学会が立ち上がり、当会が埋没しつつあることは否定できません。 実際、それは昨今の本学術集会の参加者と会員数の伸び悩みを見れば明白で、本学会の「次の四半世紀」は明るいとは言い難いです。

こうした逆境のために過去数年の年次総会は歴代会長の個人的犠牲と多大なご負担で何とか開催・存続して参りましたが今後の持続可能性は懐疑的であります。従っていま必要な事は一度立ち止まり、理事長と毎年の会長の個人的犠牲に依拠せず、また、現在の脆弱な事務局機能を強化し、任意団体を解散し、健全な体制を構築するために法人化いたしました。

まずは本学会の存続意義をゼロベースから検討致しました。多くの本会会員はそれぞれの所属領域で既に多くの学会に参加しており、従って本会の継続は働き方改革に逆行するとの意見もありましたが、本学会にはそれを補ってあまりある存在意義があるとの結論に達しました。血管内治療はこれまで各領域で独自に進化を遂げ、各々の領域学会が大きくなり、各領域が単独で学会開催を行う様になりました。このため疾患や治療に対する常識が徐々にズレが生じている様に思われます。自分の領域の中にいると似た様な意見ばかりでありこのズレが違和感なく少しずつ拡大して来た様に思われます。病院によって同じ疾患でも扱う科が異なり、場合により方針や適応が異なる事もあり、こういった事態が大きな弊害を生まないためにも領域を超えた討論の場を残すことは重要であり、これこそが本学会の存在意義と考えれます。
進むべき路が定まり、最初の問題として浮上したものが本学会の組織としての脆弱さです。 これまでは岡田昌義先生が未曽有の大災害であった阪神淡路大震災から僅か半年後に第一回学術総会を開催され、その後24年の長きに渡り先頭に立たれ「任意団体」として維持してこれらました。今後の持続可能性を考えた場合、コンプライアンスの重視に社会が変わる中、当学会も他の学会に習いガバナンスの強化が求められるため一般社団法人化する事が必要と考えられました。

このたび一般社団法人として新しいスタートを切りました。
今後上記の存在意義を発揮するためには各領域から定期学術集会に人を集め、活発な議論を行えるだけの場を作る事が重要です。本学会の理念は崇高でも人が集まらなければそれは将に机上の空論であり、領域を超えた討論の場になる事は叶いません。他領域の学会に参加する事は我々の世の中では比較的珍しい事だと思います。このため、他の診療科の医師の考え方を学ぶのは中々難しいものであります。そこで本学会に人を集め各領域の殻から脱して広い視点で血管内治療を討論する事を各領域の先生方に置かれてましては推奨して頂ければ大きな社会貢献になるのではないでしょうか。今後、4領域が学術的に相互交流を図り、これからの血管内治療を考えていきたいと思います。

今後とも本会の活動にご理解、ご支援のほどよろしくお願いいたします。